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カギをかけ忘れた「自転車」に警官がワイヤー錠、山形県警の「ロック作戦」は合法なのか?
2021年06月06日 09時22分

自転車の盗難被害に関する啓発活動をめぐって、ネット上で「根拠法令はあるの?」という疑問の声があがっている。

話題になっているのは、山形県警の「ロック作戦」と呼ばれる啓発活動だ。無施錠の自転車の盗難率が高いことから、県警は2014年から、高校の生徒会や防犯協会などと協力して、この作戦に取り組んでいる。

県警によると、高校・大学の入学シーズン、駅の駐輪場などで看板・のぼりをかかげて、「自転車にカギをかけてください!」などと呼びかける。

その際、警察官が、無施錠の自転車にワイヤー錠を取り付けてまわり、連絡先を書いたチラシもつける。「防犯診断」といい、自転車の確認作業が終われば、ワイヤー錠は外すという。

自転車の盗難被害に関する啓発活動をめぐって、ネット上で「根拠法令はあるの?」という疑問の声があがっている。

話題になっているのは、山形県警の「ロック作戦」と呼ばれる啓発活動だ。無施錠の自転車の盗難率が高いことから、県警は2014年から、高校の生徒会や防犯協会などと協力して、この作戦に取り組んでいる。

県警によると、高校・大学の入学シーズン、駅の駐輪場などで看板・のぼりをかかげて、「自転車にカギをかけてください!」などと呼びかける。

その際、警察官が、無施錠の自転車にワイヤー錠を取り付けてまわり、連絡先を書いたチラシもつける。「防犯診断」といい、自転車の確認作業が終われば、ワイヤー錠は外すという。

●ツイッター「私人がやったら違法ですよね」

この活動について、読売新聞(5月31日)が「高1女子『何が起きたの…動かせないんですけど』、警官が啓発活動で自転車にカギ」( https://www.yomiuri.co.jp/national/20210531-OYT1T50016/ )というタイトルで取り上げた。

すると、ネット上では「よい試みだと思う」と評価する声があがる一方で、「私人がやったら違法ですよね。警察官がやることの根拠法令は何でしょうか」という指摘もされている。

実際、無施錠の自転車に勝手にカギをかけた京都府の男性が昨年12月、器物損壊の疑いで書類送検されている。

京都新聞によると、この男性は取り調べに「鍵を掛けていないことに警鐘を鳴らしたかった」と供述したという。

●「点検しているうちに盗まれることを避けるため」

つまり、私人(一般人)が勝手に「ロック作戦」をした場合、刑法の器物損壊罪に抵触する可能性があるということだ。ならば、警察はどうして許されるのだろうか。

弁護士ドットコムニュースが取材したところ、県警・生活安全企画課の担当者は、ワイヤー錠をかけるのは、「警察官が点検しているうちに盗まれることを避けるため」と回答した。

また、根拠法令はないが、警察法2条の「犯罪の予防」という観点によるもので、「ことさら乗れなくして懲らしめようという意図はない」という。

●弁護士「形式的には器物損壊だが、違法性が阻却される」

刑事事件にくわしい坂口靖弁護士が解説する。

「ワイヤー錠などで固定する行為は、自転車を使用できなくさせることから、『物の効用を害している』と評価しうるので、形式上は、器物損壊の『損壊』にあたると考えられます」

ただし、警察法2条は「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」と規定されている。

つまり、個人の財産の保護や犯罪の予防をすることが責務の一つとされているのだ。

また、山形県には『山形県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例』が制定されており、「自転車利用者は施錠等の防犯上の措置を講ずるように努める」(14条)という規定もある。

「山形県警の啓発活動は、自転車窃盗の防止という『財産の保護』および『犯罪の予防』の目的で、警察に課せられた責務の履行の一つとして実施されているものであり、条例の趣旨にも合致するものと評価できると考えられます。

具体的な施錠行為も、警察がおこなったものであることや、連絡先なども明示されており、連絡をすれば、ただちに開錠されるなど、必要最小限の制約に留めているものと評価できます。

以上のような事情からすると、県警による自転車の施錠行為は、形式的には、器物損壊罪にあたるものの、『正当業務行為』(刑法35条)として、違法性が認められず、犯罪は成立しないと考えられます」(坂口弁護士)。

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